前回の続き。
やはり気になってしょうがなかったので、その後の深夜勤の後、階段の下まで行ってみた。
いる。
階段を上って近づいてみる。
顔を上にして寝ているがマスクをしているのではっきりとは分からないが、若い男性の様だ。服装は黒っぽくてよく分からないが、ホームレスな感じはしなく普通に街を歩いている若者の様だ。驚いたのは靴がとても綺麗なこと。ソールの白い部分が白いままなのだ。
あれ?もしかして、ホームレスじゃないの?
いやいや。ここのところ深夜勤の度にいるってことは毎日だろうし、4月といえども寒いのにずっといるのはおかしいだろう。
意を決して声を掛けてみる。
「すいません、お兄さん。」
返事がない。
「寝ているのかな、お兄さん。」
すると起きたらしく、
「えっ、はあーーーい?」
年齢は意外といっているらしく、30代後半~40代だろうか。私と同じ世代かもしれない。私達の世代は「ロスジェネ世代」と呼ばれ、とても就職に苦労した世代である。実際、非正規雇用が多いいのもこの世代なのではないだろうか。
「あの、これ少ないけど」
とあらかじめ財布から出して折っておいた一万円札を差し出した。一瞬きょとんをした表情に『あっ、失敗した。違った』と思ったが、
「すいません。」
と受け取ってもらえた。
「何もできず、すいません」と早口でもごもごと言って私は立ち去ってしまった。
私の悪い特性なのだが、後でもっと優しい言葉を掛ければ良かったとうじうじした。まだ寒いから、体に気を付けて、とか、これで温かいものでも食べて、とか。
後、気になったのが、彼の足元にビールの空き缶が数本入った袋があったこと。一万円は酒代で消えちゃうかな。とちょっと落胆したが、後でネットでそういう類のサイトを見てたら心が楽になる記事があった。
「渡したお金を何に使うかは分らない。煙草かも知れないし、お酒かも知れない。でも、その人がその日一日、いや、ほんの数分でも幸せを感じる事が出来れば良いと思うからお金をあげる。」
https://www.co-media.jp/article/21452
そして、刺されなくて良かった。
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